PTA副会長の後藤です。
家庭教育学級「デジタル社会を生き抜く思春期の子どもたち」が10/21土に開催されました。
文化厚生委員さんが企画・実施したもので、
講師 青山真理先生 一般社団法人 共生と共育ネットワーク 理事
による約2時間のセッションでした。
青山先生は私立高校の教員もされながら、一般社団法人の活動として、様々な自治体での講演やデジタル教育に関する様々な支援などを行っていらっしゃるそうです。
そんな中で、弦小に来てくださり、ご講演頂きました。
家庭教育学級は、世田谷区教育委員会の補助も受けて成り立っており、教育委員会の青田様にご挨拶頂きました。
青山先生の話は「デジタルシティズンシップ」がベースになっています。我々の子どもたちは、物心ついたときからスマホが当たり前の世代です。今はZ世代(1990年代後半~2010年生まれあたりの世代を指す)がフォーカスされていますが、それ以上にデジタルが当たり前の世代なわけです。
デジタルシティズンシップとはGoogle検索してみると「情報技術の利用における適切で責任ある行動規範」だそうですが、青山先生によると要するに、「沸騰したお湯が入ったやかんは触るとやけどするけど、美味しいお茶が入れられたりしますよね。つまり、リスクを最小化してチャンスを最大化しましょう」という考え方なのだそうです。
デジタルシティズンシップには8つのスキルがあり、
・デジタル市民のアイデンティティ
・ネットのいじめの扱い
・クリティカルシンキング
・デジタルフットプリント
・スクリーンタイムの扱い
・プライバシーの扱い
・デジタル共感力
・サイバーセキュリティの扱い
とのことでしたが、このうち4つのスキルについてご説明いただきました。
①クリティカルシンキング
②ネットいじめについて
③デジタルタトゥ
④ネット依存
①クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは、物事の本質を見極める力、と言われます。
近年ディープラーニングの進化によってディープフェイクと言われる「本物と判別しにくいウソの情報」が出来るようになってきました。
例えば下記のような情報ですね。
こういう情報が出てくると大人はどうしてもリスク回避傾向、すなわち「危ないから使うのをやめなさい」と言いがちです。ところが青山先生のご経験では、子どもたちとディープフェイクに関する話をするとむしろどのような回避方法があるかを自分で考えるようになるそうです。使いながら真偽を養う目を育てていく、ということが大事なのかもしれませんね。
②ネットいじめについて
我々保護者にとっては自分の子どもがいじめられるのは勿論嫌ですし、いじめに加担するのも困りますよね。
今のいじめの定義は、いじめられた側が「精神的な苦痛を感じているもの」ということだそうで、要するに何をやろうともいじめられた側が「いじめだ」と感じた時点でいじめになるということです。ところが一方で、デジタルツールを使うと「そんなつもりじゃなかったのに」ということが往々にして起こります。例えば、LINEグループでちょっとした記載をしたことが、誤解されて伝わりそれが「いじめ」になるケースもある用です。
ネットのいじめはこの5年間で倍増しており、リアルないじめと違う特徴は「24時間365日続くこと」「画像加工など従来にはない嫌がらせ」「匿名性が高く加害者が特定できない」「ネット言語に対する大人の無理解」があるそうです。
以前、熊本でいじめられた高校生が自殺するという痛ましい事件がありましたが、その時のいじめの発端になった高校生たちは「なんで私たちだけ悪いと言われるの?他の人もやってるじゃん?」と考えていたそうで、まさか自分たちが自殺の引き金を引いているとは考えたくないのかもしれません。
ではいじめにはどう対処するか?
いじめには被害者、直接の加害者、加害加担者、傍観者の4タイプが関わります。その中でも重要なのが傍観者で、見た人が先生や大人に伝える、あるいは「止めろよ」というだけで秒でいじめが止まることもあるそうです。ただ見ているだけにならずに周りが止める、あるいは止められる人になる、ということも大事な要素ですね。
③デジタルタトゥ
スマホやインターネットを使っていると理屈上は全てのログが取られます。特にインスタグラムなどのSNSは自分の情報を発信することになるので、悪い情報も平気で流れていきます。特に気を付けたいのが「個人情報」「誹謗中傷・デマ」「リベンジポルノ」「悪ふざけ・いたずら」の類でネガティブな情報はいつまでも残ってしまうので気を付けて使う必要があります。
ただ、逆に言えば、自分のポジティブな内容が記録されていればそれが残りますので、ポジティブな意味での「デジタルフットプリント」を残しましょう、というのが青山先生の主張でした。
④ネット依存
ゲーム依存はアルコール依存症やギャンブル依存症と同様に、WHO(世界保健機構)に依存症として認定されたそうです。
ゲーム依存症参考:https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1410.html
それだけでなくyoutubeなどに夢中になる子どももいますし、親としては、「いつまで見ているの!」と怒りたくなってしまいますよね。
それに対して青山先生は「怒るのではなく、ちゃんと話しましょう」と言います。子どもと近い距離で座り(出来れば子どもの左耳側に座り、感情をつかさどる右脳に働きかけるとよいそうです)、子どもの言うことを聞きながら子どもに「あなたの笑顔がなくなるのは嫌なの」と伝えて欲しい、とのことでした。
また、カップルダイアログという手法も教えて頂きました。カップルダイアログの手法は、相手の話を聞いてリフレージング&ミラーリング(相手の行ったことをオウム返しに繰り返したり、相手の動きを真似すること)によって共感を伝え、最後に相手に3択のリクエストを出して相手にやって欲しいことをお願いしよう、ということでした。
約束を取り付けるには、「AとBとC、どれかをやって欲しい」と伝えて相手に選んでもらうことが大事、とのことで、子どもに対しても「ゲームは1日1時間」というのではなく、「AとBとC、どれをやってくれるかな?」というスタンスで臨むのが良いのかもしれませんね。
全体通じて、青山先生の話は「デジタルにはリスクもあるけど、それを理解してメリットを最大限享受しましょう。子どもたちの人生でインターネットがなくなることは一生ないのだから」というトーンでした。何でもかんでも禁止するのではなく、リスクを知ったうえで正しく使う、当たり前ですが言われてみれば確かに必要なことを教えて頂きました。
今後、文化厚生委員さんから改めてレポートが出てくると思いますが、まずは速報として皆さんの参考になれば幸いです。
興味がある方は参加された方が周囲にいらっしゃれば聞いてみてください。
次回は11/25土 AMに子どもの自己肯定感を上げるための「ほめ方」について別の先生に講演をお願いしているようです。ご期待ください。