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連載エッセー「まなぶ」ということについて

                                PTA会長 岡田憲治 #008 まちがえるということ

 みなさんは、筆箱に必ず消しゴムを入れてありますよね。まちがったところを消して、正解を書き入れたいからです。答えが「合ってる=良い」、「まちがっている=悪い=消す」となります。  でも、これでは思い込みが強すぎます。なぜなら、人間は全員まちがえるからです。まちがえる理由は、たくさんはありません。「思い違いをおこす」ことと、「世界のことの一部しか知らない」ことの二つです。だからまちがえることは、全く普通のことです。  前回、「考えること」の中には、「予想してみる」、「結びつけてみる」というものが含まれていると言いました。「まちがえる」とは、この結びつけがはずれていた、もしくは結びつかなかったということです。そんなことは1日に20回ぐらいあります。  でもこれを全部消しゴムで消してしまうと、どうなるでしょうか?  簡単です。どこがはずれていたかがわからなくなるのです。はずれたところがわからなくなると、次にはずさないためにどうしたらいいかも、わからなくなります。私は、友だちに本当にひどいことを言って、「はずして」しまいました。でもそのできごとは、消しゴムを使ってなかったことにすることができず、40年以上たっても、「あそこではずした」とウジウジと覚えています。  みなさんは、答えをまちがえることをものすごく恐れます。本当に怖がります。答え合わせをして不正解だと、すごいスピードで消しゴムを探します。どうしてでしょうか?何をそんなに心配しているのでしょうか?  みなさんが心配している理由とは、「まちがえるとバカだと思われるんじゃないかしら?」という心のはたらきのせいです。「不正解=バカ」という決めつけです。  これをあまりに恐れると、「ぜったいにまちがえない人になる」などという「ぜったいに無理な目標」を立てることになり、これを信じて、大人になってまでも「私は一番の大学に行ったのだからまちがえない。まちがっているのは、この世の中だ」などとがんこになって、高い地位について、みんなを不幸にするような秀才になります。  でも、やっぱり「それは違うよ」と言われるのは、あまり嬉しいことではありません。私たちのまわりには、もっとやっかいな言葉もあります。「できる」と「できない」です。じつによく使いますから、心に与える影響も大きな言葉です。 「できる」と言ったって、これまでに何度も言いましたように、「知っているだけ」という場合もありますし、「頭では描けないけれど、描ける時はものすごく描ける」なら、とての「できる」人なのかもしれません。 みなさんのように、とにかく覚えて身につけなければいけないこと(九九とか)が、たくさんある小学生は、「合ってる」、「正解」、「できる」という言葉に負けがちで、まちがえることが本当は「お宝の山」なのだということを、なかなか心にとめることができません。

 だから「まちがえることはそんなに悪いことでもないんだ」という心のくせにするのに必要なのは、頭の良さではありません。「よくまちがえたね!いいね!」と言ってくれる大人と、スプーン一杯ぶんくらいの「勇気」なのです。  そして、その勇気のよいところは、「あとになって強めることができる」ことです。

 つづく。

 
 

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