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執筆者の写真オカケン

連載エッセー「まなぶ」ということについて

更新日:2020年6月22日

                              PTA会長 岡田 憲治

#003 「知っていることと、わかっていること」 前回は、テストの点を取るために勉強することと、学ぶことの違いがちょっと気になるという話でした。今回は、そのあたりをさぐるために、「知っていることと分かることは同じなのか?」について、考えてみます。

みなさんがテストで良い点を取ると、先生も保護者も「おお、わかってるんだなぁ」なんて、ちょっと安心します。その気持ちはよくわかります。でもテストというものは、あまりわかっていなくても、良い点が取れる時があるんです。 「わかっていないのに点が取れる?」

これはどういうことでしょうか?

私は小学生の時、算数が好きでした。好きだったのは、答えを出してくる道筋が頭の中で想像できたからです。例えば、4÷2は、四つのみかんを二人で二つに分けると考えて、みかんを四つ頭に浮かべて、それを友達と二つに分けるんだな、としたのです。 ところが高学年になって、分数の掛け算や割り算が出てきた時、このやり方でできなくなってしまいました。「3/4を3で割る」という時は、ギリギリでこの道筋が頭に浮かんだのです。3/4とは、1/4が三つですから、三つに分ければいいのだと思えたのです。 でも、3/4÷3/8というのが出てきた時、私はまったく困り果ててしまいました。自分の頭の中に「3/8で割る」ということが、どうしてもイメージできなかったからです。つまり、私にとって頭の中でイメージできないものは、「ワカラナイこと」だったのです。

教室では、先生は「そういう時には、3/8を逆にして8/3をかければ答えが出ます」と教えてくれましたから、3/4÷8/3の答えは「知っている」のです。でも「どうしてそうやると答えが出るか?」が、わからないのです。頭にイメージが浮かばないからです。

友達にそれを言うと、「そんなの気にすんなよ!答えが出てテストで点が取れればいいじゃん!」と笑われました。私は困ってしまいました。答えを知っているのに、「わかっていない」自分に、とてもいこごちの悪さを感じてしまったからです。その時の気持ちは、「オレは知っているけど、分かっていなくて、ズルをしている」というものでした。  私はその後、おじさんになる今になるまで、ずっとこの気持ちの悪さを忘れられずに、そのくせ大学で授業をしています。

この「ズルをしているのではないのか?」となったできごとが、「点を取ること(知っていること)と、分かっていることは同じことじゃないんだ」と最初に思ったきっかけでした。

それじゃ、わかっていないくせに、「ただ知っているだけ」が、全然意味がないことかといえば、そうでもないのです。やっぱり知っていることは、学ぶことにとってどうしても欠かすことができないことです。九九を覚えていない人は、分数の計算が苦しくなります。

さてさて、どうしたものか? このことを考えるためには、「わかる」ということを、なおもていねいに考える必要があるようです。 「学ぶって?」をさがす旅はまだまだつづきます。

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